チョコミントアイスの奇跡(後編)

こんなキラキラのカフリンクスをつけるようになったキッカケは、あるネクタイにあるんじゃないかと思っています。

話は、私がカフリンクスを売るようになる前にさかのぼります。
私が名古屋営業所にいたときのJR名古屋タカシマヤさんの販売員さんがオススメしてくれたネクタイが「チョコミントアイス」のような色のネクタイでした。自分では選ばないようなものを提案してもらって、それを気に入るっていうのは、対面販売の醍醐味です。

そして、私の場合は「チョコミントアイス」のネクタイが気に入ったら、ちょっと苦手だったチョコミントアイスも好きになったし、その後、カフリンクスをつけるようになるとネクタイとのコーディネイトでキラキラも抵抗なく選べるようになっていました(リングやブレスなどのアクセはいまだに苦手なので、不思議です)。

仮にこういう現象を「チョコミントアイスの奇跡」と呼ぶことにしましょう。

ネットショップでもこういう「キッカケの提案」ができれば楽しいなぁと思います。

Amazonの場合、おすすめ商品は、キーワードや購買履歴に基づいて機械的に抽出されたものが並ぶわけですけど、レビューがついていることで多少はライブ感が生まれます。レビューの視点が面白ければ、その人(もちろん見ず知らずの人)を信じて買ってみようと思うことがあるし、逆にレビューがない商品だと注文を見送ることもあります。

以前に私が働いていたヴィレッジ・ヴァンガードでは、手書きのPOPをつくることが一種の「接客」でした。現在では、書店の手書きPOPはめずらしくありませんが、ヴィレッジでは創業時(1986年)から「単にベストセラーを山積みにしただけ」といった陳列はしていなかったようです(さすがに創業時は従業員ではありません。1990年代半ばからお客さんとして通いはじめました)。

たまに対面販売でも、セールストークのつもりなのか「よく売れていますよ」というようなことをおっしゃる販売の方がいらしゃいます。そのことばで安心するお客様もいくらかはいらっしゃるのかもしれませんが、私には無意味です。大量に消費される生活雑貨ならともかく、ぜいたく品の類であろう商品で「売れています」と言われても、「それが私に何の関係がありますか?」と思ってしまいます。

翻って、ネットショップの場合は、お客様ひとりひとりにあわせた=カスタマー・オリエンテッドな提案をすることは、システム的にもかなり高度ですし、そもそも私が運営するネットショップ(まだオープンしていません)では、統計的に意味のある情報が得られるほど「よく売れる」という商品があるのかどうかもアヤシイわけです(たくさんの人にカフリンクスを使っていただきたい、とは思っていますが)。

しかし、めったに売れない商品でも、それを「つくったひと」や「仕入れたひと」には何らか意図があったと思うのです。その意図を汲み取り、提案として別な表現に置き換えるという作業が私の役割かと思っています。
そして、そういう地味な作業を長く積み重ねをしていくことで、弱小ネットショップならではの「チョコミントアイスの奇跡」を生みだしたいと考えています。

GenRock店長でした。