山神さんのシャツを詳しく見てみよう(2)

シリーズ「山神さんのシャツを詳しく見てみよう」の第二回です。
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前回、「剣ボロ」部分に見つけた補強縫製。
$カフリンクスの日々〜実践!カフスのつけ方・使い方-山神さんのシャツ-カフスまわり
これと同じような縫製がなされている箇所が他にもあります。

前ボタンの上から3番目、その少し下。身体でいえばミゾオチの上あたりにくる部分です。
$カフリンクスの日々〜実践!カフスのつけ方・使い方-山神さんのシャツ-胸まわり第3ボタン
このシャツの場合、裏前立て(フレンチフロント)で仕立てられていますが、その下側になるボタンがつけられている側です。裏前立てと同様に、こちら側も内側に三つ折にして裾からチクチクとまつられていますが、それがここで止まっています。胸の部分をまつらずに残すことで、伸縮性をもたせる狙いがあるものと思います。
伸縮性があるということは、折り返し部分が広がるということなので、まつってある部分の終端には負担がかかることになります。ですから剣ボロの開きと同じように、補強縫製になっているのではないでしょうか。
しかも、この補強縫製はガチガチに縫い固めたものではなくて、ふんわりとしたループになっており、それ自体が弾力性をもっているという不思議なディティールです。

不思議といえば、ボタンつけも変わっていますね。
$カフリンクスの日々〜実践!カフスのつけ方・使い方-山神さんのシャツ-胸まわりボタン鳥足
鳥足(鳥足がけ、鳥足縫い)と呼ばれるボタンつけの方法です。オモテから見ると鳥足というか矢印のようなカタチに糸がかけられています。その矢印の先端のほうで、「根巻き」された長い足がついているのが写真でも確認できると思います。

足がボタンの中心からズレた位置にあることで、ボタンをかけない状態ではナナメに浮いたようになるので、ボタンを指先でとらえやすく、するっとかけることができます。
また、この長い足はボタンホールの厚みを考慮しているものなので、ボタンホールに負担をかけることもありません。
$カフリンクスの日々〜実践!カフスのつけ方・使い方-山神さんのシャツ-胸まわり
このシャツのように細かいストライプが入った生地の場合、ボタンホール付近でむぎゅっとパターンが乱れるような現象がよく見られます。しかし、このシャツではボタンホールが広がることもなく、ストライプが美しく平行に流れています。

GenRock店長でした。

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